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2005.05.02

『幸福な食卓』

瀬尾まいこ『幸福な食卓』 講談社を読む。

最近、村上春樹を唯一の例外として、小説を読むことがほとんどなくなった。なぜだろうと考えてみると、リアルの生活への対応に追われているからだと言うことに気づく。

プロフィールに書いてあるとおり、オカダの趣味は読書である。つまり、本を読むこと自体が好きなのであって、勉強のためとかいうような、何かのために本を読むのではないのだ。言ってみれば「活字中毒者」である。

そんなオカダが、リアルの生活への対応に追われて本を読むということは、端的に言うとリアルの生活がうまくいってないということである。そこでオカダがすがったのが、内田先生の著作だった。

そのような折り、新聞の新刊紹介の記事が目に留まった。『「父さんは今日で父さんをやめようと思う」。・・・父さんの衝撃的な一言で始まる小説』とあった。父さんをやめる?。さっそく購入して読んでみた。

すると、想像以上にいい小説だった。ラストのシーンでは、思わず目頭が熱くなってしまった。内田先生の『冬ソナ』評 のように拭いたティッシュが五万枚、とまではいかないが、ティッシュ2,3枚は消費してしまった。

主人公の佐和子は中学生。それに、父さんをやめた父さん、家出中なのに料理を持ち寄りにくる母さん、元天才児の兄・直ちゃん、そして佐和子のボーイフレンド、兄のガールフレンドなど、登場人物はみんな、ちょっと変わっているけど心が暖かくてユーモアがあって、いい人ばかり。作者独特の、非常に魅力的なキャラクター設定だった。

ストーリーも、タイトルとは逆に決して“幸福”とはいえないものだけど、淡々とユーモラスに描いてあって、将来に希望が持てるような内容になっていた。

内田先生は、精神科医の名越康文さんと対談した本『14歳の子を持つ親たちへ』 新潮新書 の中で、家族での対話の基本というのは、「お腹減ってる? ご飯あるよ」とか、「お風呂入る? 沸いてるよ」とか、「眠い? お布団干しておいたよ」とか、そういう生理的な快の提供と不快の除去にある」と語っている。この小説に出てくる家族は、まさにそういう対話が成り立っている家族だと思う。

さらに内田先生は、家庭では「節度」を守ることと相手の感覚を「察すること」が重要だと述べているが、この家族はまさにそのことを実践しようと努力していると感じた。

「家族」というものについて、いろいろと考えさせられる小説だった。

本好き、図書館好きのオカダとしては、同じ著者の『図書館の神様』という小説も気になるので、読んでみようと思う。

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Comments

TBありがとうございました♪
そう、誰か読んでるだろうなとは思いつつも、探すのが億劫で(笑)。
でも、オカダさんの記事読んだら、わたしのよりもずっとずっといいことが書いてあるわ。
このころよりも、オカダさんのリアルな生活は、精神的に楽になってるのでしょうか。

読んでもいいよねえ、とは思っていたけれど、そのあっさり加減からか、食指が動かなかった作家です。
どうも濃いものばかり読み過ぎてるせいか、日本の作品は読み流しちゃうことが多くなってます。反省。
日々の風景を掬いとるのがうまいなぁと思いました。
一見平和そうな家庭だって、何がしかの問題を抱えてるんですよね。

映画のほうは、直ちゃん役に「スウィングガールズ&ア・ボーイ」の「ア・ボーイ」平岡祐太くんが出てます。
DVDが出たら見ようっと。

Posted by: ヤヤー | 2007.03.14 at 12:23 AM

ヤヤーさん、こんばんは。
古い記事で、読み返すとなんだか恥ずかしいです。あの頃よりは、確かに楽になったと思います。ブログを書くこと、そしてヤヤーさんを始めとした読者のみなさんに大いに助けられてます。今さらですが感謝の気持ちで一杯です。

この本は、雑誌かなにかで紹介されてたので読んだんですが、本当に「大当たり」でした。特に女の子の心情を描くのがうまいと思いました。

映画は、こちらではもう終わったようです。サイトの予告編を見たら、主役のカップルはすごくいい感じでした。DVD、早く見てみたいです。

Posted by: オカダ | 2007.03.14 at 07:02 PM

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Tracked on 2005.06.09 at 06:04 PM

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