『大学のエスノグラフィティ』
船曳建夫『大学のエスノグラフィティ』有斐閣 を興味深く読んだ。著者は東京大学大学院総合文化研究科教授で、文化人類学者。あの『知の技法』の編著者。
「エスノグラフィ」とは、文化人類学において、ある集団や社会の全体を記述したもののこと。「エスノグラフィティ」とは著者の友人の造語で、この本は大学の「全体」ではなく、「私の視点から切り取ったいくつかの大学についての「走り描き」を重ねたもの」だからという理由により命名したとのこと。
内容は非常に興味深かったが、中でも第1章の「ゼミの風景から」はいろいろ面白かった。
「3 ゼミの技法」の項では、ゼミにとって最適な人数は、「12人というのがマジックナンバーのような気がします」と書いている。12人と言えば、映画「十二人の怒れる男」を思い出す。この12人というのは、アメリカの裁判における陪審員の数のことなのだが、議論するにはそれくらいの人数がちょうどいいということなのだろう。日本で導入が予定されている裁判員制度も、裁判官と裁判員併せて12人という案が出ていた。
ちなみにオカダも3回生のとき必修のゼミをとっていたが、学生は40人くらいだった。2人がペアになって発表を行い、それについて討論するというものだったが、1年に1度担当が回ってきただけで、非常に楽だった。どういう事情でそのような人数だったのかは知らないのだが、楽故に人気のあるゼミだった。
また興味深かったのはゼミの面接について。著者は2回面接を行ってゼミに取る学生を選ぶそうで、そのことからもゼミに非常に力を入れていることが窺える。2年に1度はゼミのOB会を開催するというのだから恐れ入る。
先生は学生を「愛して」いないとやっていられず、では学生を愛する秘訣は何かと言うと、気に入った学生しか取らないということだそうで、思わずナットク。
そういえば内田先生も以前ラカン的ゼミ面接 というエントリーで、『内田ゼミのゼミ生選抜基準は「まわりの友だちから『あなた変よ』と言われている人」』と語っておられた。
著者も、多くの学生に「君はどういう人ですか?」と質問するそうだが、「友だちは、変わった奴だと言います」と答える学生に、変わった学生がいたためしはないそうだ。それは、「自分で自分のことを考えたことがないので、他人がどう言うかを自分の説明としている」から、となかなか手厳しい。この辺り、内田先生との考え方の違いは非常に面白い。
ちなみにオカダのゼミはくじ引きによる先着順だった。面接だったら果たして取ってもらえただろうか。
他にもいろいろ取りあげたい内容が盛り沢山だが、今日はこの辺で。本の帯には「上野千鶴子氏も推薦!」とあり(笑)、ウチディエンヌ&ウチディアンにはおススメの1冊。
そういえばこの著者の『「日本人論」再考』は興味を惹かれるタイトルだが未読。そのうち読んでみることにしよう。


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