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2005.10.28

『街場のアメリカ論』

内田樹先生の新著をようやく読み終わった。この本も、

「原因」というのは、「原因がわからないとき」にだけ人間の脳裏に浮かぶ概念なんです。(p38)

とか、

ある歴史的な出来事の意味を理解するためには、(中略)「なぜ、この出来事は起きたのに、他の出来事は起きなかったのか?」という問いも同時に必要なのです。(p39)

などなど、内田先生ならではの知見が横溢していて、瞠目させられることばかりだ。

中でも印象に残ったのは、第3章 哀しみのスーパースター ーアメリカン・コミック における、アメリカンヒーローの話だ。少し前に映画「スパイダーマン」をTVで見たのだが、まさに「無理解と受難」というストーリーだったように思う。いつか多くのアメリカ国民が、『「世界の警察官」アメリカが、世界に平和をもたらすよりはむしろ不和と戦争をもたらしている』、という事実に気づくとき、そのようなストーリーも変化するのだろうか。

それにしても、戦後アメリカにかけられた「従者」の呪いは、相当強力であることは間違いない。それにどう対処していくか、日本人は今後も常に悩まされることだろう。今流行っている嫌中・嫌韓なども、その呪いと大いに関係があるように思う。

この本はよく売れているようで、その事実は、『「他人が間違っていること」を論証するために割いているのと同程度の知的資源を「自分が間違っている可能性」を吟味するために割』く習慣を持つ人々が、一定数いることを指し示しているのだろう。

直接本とは関係ないが、先生の26日のエントリーに、79歳になる御母上から「よくわかった」というファックスが届いたと書かれてあった。オカダなどは、現時点では半分くらいしか理解できてないと思うので、我が身の浅学をただ恥じるばかりである。ファックスを使いこなしておられるのにも感心した、というのは御高齢の方に対する偏見だろうか。

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2005.10.26

メイド喫茶考現学

先週末、福岡へ出張したついでに、初めてメイド喫茶へ行ってきた。オカダは基本的に書斎派であり、活字から知識を得る場合が圧倒的なのだが、たまには書を捨てて街へ出、フィールドワークをしてみようと思ったのだ。

福岡の繁華街、天神に着いて、「天神style」という店を目指し、ネットで調べたあたりをうろうろするも見つからず。「メイド喫茶はどこですか?」と誰かに訊くのも憚られ、探して回った挙げ句ようやく見つけた。ビルの2階だったのだ。ネットをよく見ておくべきだった。

店のドアには、先日警察から「風営法に抵触する恐れがある」と警告を受けたところでもあり、「当店では接客はしますが接待はしません」と書いた紙が貼ってあった。

思い切ってドアを開けると、基本どおりの「お帰りなさいませ、御主人様」の声が。やっぱりちょっと恥ずかしいものがあった。店内は白い内装に、窓にはレースのカーテン、木のテーブルと椅子に、オフホワイトのテーブルクロスと、落ち着いた雰囲気だった。店には3名のメイドさんがいて、黒のワンピースに白いエプロンという格好だけど、それぞれ微妙にバリエーションが違っていて、1人は小柄な子、もう1人はメガネに短めのスカート、もう1人はスマートな子というラインナップだった。

お客は、やはり20代の若い男性が中心のようだ。お昼どきのせいか、カップルや、女の子が1人混じったグループもいたが、VIP席のカウンターに座ってたのは男性ばかり。いかにもオタクそうな感じがしたのは先入観を持って見たせいか。

喉が乾いていたのでアップルジュースを注文し、店内を観察。隣の席の客がオムライスを注文して、「ご主人様の好きな文字をケチャップで書かせて頂くのはもちろん、ふんわり玉子焼きを目の前で開かせていただきます 」というサービスを受けるのを見物。

カウンター席の男性たちは、常連なのか、カウンターの中のメイドさんと会話したり客同士で喋ったりしていた。その中の1人は20歳くらいで、頬を赤くしながらメイドさんと楽しそうに話しているのが印象的だった。

オカダも席が空けばVIP会員になってカウンター席に座ろうかとも考えていたのだが、いつまでも空きそうになく時間もないので店を出ることにした。勘定は席に着いたままで済ますことができ、メイドさんの1人がドアの外まで見送ってくれて、やはり「行ってらっしゃいませ、御主人様」と声をかけられた。

正直言って、若者がはまるのも当然だろう。メイド喫茶は、2001年3月に「Cure Maid Cafe」(キュアメイドカフェ)が秋葉原にオープンしたのが最初だと言う。重要なのは、メイドというものが象徴する意味だろう。若い男性が、数あるコスプレの中でもなぜ「メイド服」を好むのか、そこにメイド喫茶が流行している鍵があると思う。当然ながら主人とメイドというのは主従関係であり、対等な関係ではない。その関係こそが重要なのだ。(この項、続く)

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2005.10.20

『ブラフマンの埋葬』

オンライン書店ビーケーワン:ブラフマンの埋葬

小川洋子『ブラフマンの埋葬』講談社 を読んだ。本屋大賞を受賞した『博士の愛した数式』の次に出された小説。夏のはじめのある日、僕の元にやってきたブラフマンという小動物と僕との物語。このブラフマン(Brahman)というのは、ウィキペディアによると、ヒンドゥー教またはインド哲学における宇宙の根本原理ということだ。

この小説の舞台は、『創作者の家』。主人公の「僕」はそこの管理人をしている。ブラフマンがどんな動物なのかは最後まで分からないが、その可愛さ、「僕」が注ぐ愛情は十分過ぎるほど伝わってきた。

それほど長編ではないので一気に読んでしまったが、まさに佳作(よい作品)というにふさわしい小説だと思う。読み終えて、なんとも言えない透きとおった哀しみと、ある種のさわやかさを感じた。

石棺や季節風などが登場してきて、舞台が日本ではなく南欧のような印象を受けた。美しい風景が心に浮かんできて、『トニー滝谷』の市川準監督に映画化してほしいような作品。

ちなみに、オカダは作者の小川さんの恥ずかしい過去を知っている。興味のある方はコメントをお寄せください(笑)。

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『人生後半戦のポートフォリオ』

hoddyさんが、以前御紹介した 水木楊 『人生後半戦のポートフォリオ』 文春新書 を読んだ感想をブログにエントリーしてくださった。この本は1年ほど前に読んで、非常に考えさせられた本だ。内容についても、hoddyさんが的確に紹介されている。

カネ、モノ、自由な時間は三者択一の関係がある。
100%=M(MONEY)+G(GOODS)+FT(FREE TIME)
例)Mが減れば、GとFTが、あるいはどちらかが増える。

この2行目の式は恒等式になっている。100%というのは、人間の人生全体を表すものだと考えてもいいと思う。英語で言うとリソースという言葉が近い感じがする。

我が身を振り返ってみても、M(MONEY)を増やすためにFT(FREE TIME)をどうしても犠牲にせざるを得ない。また、オカダはモノにこだわる性格なので、本やCD、ビデオなどがどんどん増えてしまい、それによってM(MONEY)や、モノを管理するためのFT(FREE TIME)も犠牲になってしまっている。

この本に従って自分の時給を計算してみた。すると、5分当たりでも無視できない金額になることがわかり、改めて時間の貴重さを認識した。万人にとっても1日は24時間しかないし、しかも自分の人生がどれくらいあるか、わからない。『「時間」って奥が深いですね』というhoddyさんの意見に激しく同意。

大切なことは、「時間を自分の選択にもとづいて最も有効に過ごそうとしたとき、時間は初めて最も価値のある財になる」ということを日々はっきりと自覚していることではないだろうか。

hoddyさんの今の理想を数式にすると・・・

時間×努力×才能×運
  = 快楽-苦痛+健康+カネ+モノ+無駄
    = 人生

ということだそうだ。「無駄」というものを重要視しているところが興味深い。確かに、何事においても無駄は必要だと思うし、逆に言うと無駄を徹底的になくそうとすることは、極めて危険なことのように思う。

今回hoddyさんのエントリーを受けてこの本をパラパラとめくってみたが、哀しいかな内容をほとんど忘れていた。とても内容の濃い本だから、もう1度読んでみよう。いつになるかわからないけど(笑)。

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2005.10.14

やさしいかおりのする秋に

家の近くの夜道を自転車で走っていると、いい匂いがした。暗がりの中、キンモクセイの花が咲いているのがぼんやりと見えた。昼間は暑くてまだ半袖のシャツを着ていたりするのだけど、季節は確実に秋に変わったようだ。

帰宅して入浴、夕食を済ませる。窓を開けていると、部屋の中にまでキンモクセイの香りが漂ってきた。その香りをつまみに、ビールを飲み、今日一日、さらには今週を振り返ってみる。1日短いだけでも、あっと言う間に終わってしまった一週間だった。やさしいかおりに乾杯!

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2005.10.12

道後温泉

連休中、道後温泉に行ってきた。今まで1度しか行ったことがなくて、映画『がんばっていきましょい』にも登場する2階の休憩所には行ったことがないので、だいぶ涼しくなってきて温泉気分も盛り上がってきたことでもあるし、出かけてみた。

伊予鉄道の市内電車に乗っていこうと古町駅に着いたら、間もなく「坊っちゃん列車」が発車するということで、せっかくだから乗っていくことにした。その「坊っちゃん列車」は、明治21年10月28日に運行が開始された、日本最古の軽便鉄道の復刻版ということで、その名は夏目漱石の小説「坊っちゃん」に登場したからということだ。客車は全部昔ながらの木製で、座り心地がいいとは言えないが、レトロな雰囲気がたっぷりだった。

30分ほどで道後温泉駅に着き、先に腹ごしらえすることにして、道後商店街の近くにある「にきたつ庵」へ。メニューの「地麦酒昼膳」という愛媛の旬の食材を贅沢に使った桶料理を注文。地ビールの「漱石」という名のスタウトタイプの黒ビールを味わい、瀬戸内の新鮮な海の幸と山の幸を食す。そういえばここには、あの堀江社長も6月に来たらしい。

それから、いかにも温泉街といった雰囲気の、土産物屋さんが並ぶ道後商店街を歩いて道後温泉へ。今回は奮発して神の湯二階席コース、800円に。そして二階の休憩所へ。ここで浴衣を受け取り、1階の神の湯へ。明治27年に建てられたとうからかなり古く、歴史を感じさせる。熱めで透明のお湯だった。

入浴後浴衣を着て、再び二階席へ。そこでお茶とお煎餅のサービスを受け、ゆっくりとくつろぐ。ここは畳敷きの広い場所で、窓の外の柳の木が風情を醸し出している。もちろん悦ネエとコーチがいるはずはないのだが、観光で来たのだろう妙齢の女性が、浴衣姿で涼んでいる姿は絵になる光景だった。

ゆっくり休憩したあと、歩いて道後ぎやまんの庭」へ。美術館で江戸明治大正時代に作られたぎやまんガラスの製品を見学し、ぎやまんショップでガラス製品を見、ぎやまんの庭を散策。ガラスのきらめきを味わった。

短い旅だったけど、旅情を満喫することができて、いい1日だった。

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2005.10.06

TVドラマ『電車男』とオタク

最近あまりTVドラマを見ることがなかったのだけど、『がんばっていきまっしょい』を見るようになって、ついつい他のドラマも見てみようという気になり、『電車男』の初回を見たら非常に面白かったので、結局毎週欠かさず見てしまった。オカダはネットも本も読んでいないし、映画も見ていないけど、もちろんだいたいの粗筋は知っていた。それでも毎回楽しめた。

このブログでも取り上げたかったのだけど、『がんばっていきまっしょい』と「村上モトクラシ」について書くので手一杯だったので、書けなかったのだ。今日はちょっと書いてみたい。

画期的だったのは、ドラマの主人公がオタクだったこと。これはドラマ史上初なのではないか。では『オタク』とは何か、ということで、とりあえず「はてな」で調べてみると、

1,中森明夫氏の造語。当時は「おたく」と表記。
2,現在は、主に20代以降の、アニメ・漫画・ゲーム・アイドルなどを愛好する人(たち)のことを指す。
3,特定の趣味分野に生活の時間や所得の多くをかける人(たち)のこと。一般層が使用する、一見矛盾した「アウトドアおたく」的表現はここからくる。
4,元々ロリコン漫画誌から発せられた造語の為、本来は(性的表現も含む)コアな漫画・アニメマニア(特に男性)を指す蔑称。
5,「ファッションに関心が無い、自室にこもりがちな」暗い人物への蔑称として使用されることもあった。

ということのようだ。さらに、歴史的背景としては

1980年代初頭のコミケや漫画専門店にたむろする常連達が二人称に好んで使った「お宅は?」からヒントを得て、蔑称(差別用語)として定義されたもの。当時あった流行語「ネクラ(根暗)」の発展系と考えていい。

ということだそうで、「オタク」ってやっぱり蔑称のようだ。同じようにアニメ・漫画・ゲーム・アイドルなどを愛好する人でも、どうやら女性は「オタク」と呼ばれないようだ。「ヲタク」あるいは「ヲタ」という表記もあるようで、こちらは「より退廃的・蔑称的意味を持つ」とのこと。

実はこの間、初対面の20代の女性にいきなり「あなた、オタクでしょ」と言われて、それ以来そのことがトラウマになっているのだ。ごくフツーの格好だったはずなのに、なぜそう言われたのか、「オタク」の匂いがするのか、まさに orz という感じだった。

でも我が身を振り返ってみると、確かに「オタク」に非常に近いキャラクターであるかもしれない。あれこれのめり込みやすく、今強いて言うと、村上春樹オタク、内田樹先生オタクというところか。

そんなオカダだから、『電車男』ではずっと主人公・山田に自分の姿を投影して見ていた。山田が大げさにきょどっているのが一部で不評だったようだが、けっこうリアリティが感じられた。「オタク」というのは基本的に人とのコミュニケーションが苦手だろうし。

ということで、今夜(10月6日)に、『電車男』のスペシャルが放映される。今回は劇団ひとりが主役だという話だが、シリーズでも非常にいい味を醸し出していただけに、とても楽しみだ。

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2005.10.04

春樹さんのお仕事 by オカダ

村上春樹さんから村上モトクラシに最後のメッセージが届いた。ずいぶん精力的にお仕事をされているようで、読者としてはうれしい限り。

オカダ的には、『意味がなければスイングはない』は絶対買います。『ポテト・スープの大好きな猫』も。

そして、書き下ろしエッセイ「プロジェクトZ」も大いに楽しみにしています。もちろん期待値が最大なのは大きめの長編小説なんですが。「村上ソングズ」も絶対に来年中に出版してほしいし。

春樹さん、本当に頑張ってください。読者としても、頑張ります。何を頑張るかというと、本を買えるようにがんがん仕事をしてお金を稼ぐということ。株のデイトレードをやって日銭を稼ぐ、というのも魅力的ではあるが、結構難しそうだし。

さて、春樹さんからの質問というのは、村上作品を、『ノルウェイの森』の前と後に分けると、あなたはどちらが好きですか? というものだった。

作家としての春樹さんにとって、『ノルウェイの森』の前と後とでは周囲の環境ががらっと変わったことは間違いないだろう。『ノルウェイの森』があんなに売れなかったら、その後の春樹さんの作品もかなり違ったものになっていたかもしれない。その意味では、オカダにとっても『ノルウェイの森』は微妙な作品だ。

さて、オカダの答は、迷うことなく『ノルウェイの森』前 。『ねじまき鳥クロニクル』も傑作だし、『海辺のカフカ』も素晴らしい作品だ。でもやはり初期三部作、そして『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の方が好きだ。これは非常に個人的な思い入れであり、この先どんなに素晴らしい作品が書かれようとも変わることはないような気がする。でももちろん、一生読み続けるつもりです。

みんなの回答も、ほぼ2対1で「前」が多かった。これはちょっと意外だった。「後」の方が多いかと思っていたのだ。回答したのは古くからのファンが多かったということだろうか。

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