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2005.11.11

怒りの方法

内田樹先生が、大峰山のことについて2度に渡って書かれている。オカダはそれを読んで、辛淑玉『怒りの方法』岩波新書という本を思い出した。

大峰山に行った性同一性障害のひとびとは、「性差別の撤廃」を謳っているいるのだろう。日本で唯一の女人禁制である大峰山に入ることが、「性差別の撤廃」の象徴としての意味を持つというのは理解できないこともない。

しかし、その人たちの具体的目標は、大峰山に一般男性と同じようにハイカーとして、観光客として入りたいということのようだ。これは運動の具体的成果としては、あまりにも切実さの乏しい問題だという気がする。日本社会における性差別の問題で、もっと切実に、緊急に解決されるべきものがまだ多くあるのと思う。そういう問題に対して運動するのであれば、一般の人々の理解も得られるのではないか。

そしてまた、あのような内容の質問書を作成し送付したこと、結果として入山を強行した人が出たことは、運動の方法として非常にまずかったと思う。

内田先生は、「大峰山炎上」のエントリーで、

ある種の人権主義や市民派も相当に風向きが悪い。
それは、これらの社会理論が「弱者が『政治的正しさ』をかざしてふるう権力」に対する倦厭感を私たちの社会に瀰漫させたことに原因がある。
いずれ、この倦厭感はこれに類する無思慮な言動をきっかけにして「暴発」することになるだろう。
私がおそれるのは、そのときにフェミニズムや人権思想や市民主義のもたらした「最良の成果」が、「産湯と一緒に」棄てられてしまうのではないかということである

と書かれている。

『怒りの方法』のよれば、

日本社会は「判官びいき」と言われる。たしかに弱者が物言わず耐えている間は、同情を寄せる。だが、その弱者が声を上げて主張しだすと、今度は強烈な嫌悪感と憎悪で攻撃し、そして排除する。「権利ばかり主張する奴だ」「世間を騒がせる迷惑な奴だ」などと。

ということで、残念ながらこれは事実だろう。だからこそこの本に書かれているように、怒りを表現するには、然るべき対象に対して、正しい方法をもって行うことが大切だと思う。

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Comments

 この一件、私は「なんと愚かな」と思ったんです。
ただでさえ、同一性障害って偏見の目で見られているのに、こんなだまし討ちのような行為は、それを助長するだけだと。
後先を考えずに、騒ぎを起こすのは性別ではなく、人間として問題だなと。

 私は、女人禁制の場があってもいいと思ってます。男女同権なんだらか土俵でも聖なる山でもどんどん行こうぜーって考え方には抵抗があるんです。だったら男性の巫女も許されるのか、とかね。

 制約があるのは、女性だけではないはずで、だからいろんな場所に踏み込みましょう、ではなく、その制約の中で自由を考えましょうの方がしっくりとくるのです。
 考え方が古いのでしょうね。

Posted by: らぴす | 2005.11.11 at 10:29 PM

らぴすさん、こんばんは。
男性と女性、どこまで同じでなくてはいけなくて、どこまでは違っていていいのか、なかなか難しい問題ですね。すべて個人が自由に選択できるのが一番いいんでしょうけど、それも難しいですよね。

Posted by: オカダ | 2005.11.11 at 11:42 PM

オカダさん、こんにちは。
うなずきながら読ませていただきました。

この問題についての理解はボクは内田先生のブログを読んだくらいですけど・・・
ボクは、ホワイトバンドじゃないですけど、本質的な問題に直接的に効果があるわけではないけども、世に問題提起をする行動もあっても良いのかな?と思っています。もちろん、オカダさんのおっしゃる通り最後は「然るべき対象に対して」の働きかけが不可欠ですけど。
なお、今回の大峰山関連の行動については否定も肯定もできるほど理解していませんので、念のため。

それにしても、「男女平等」と「日本文化」を両立させるのは難しいですね。文化は必ずしも“客観的”“科学的”“効率的”じゃないですから・・・
スイマセン、長くなりました。いろいろ考えさせられました。
とても良い記事ですね。

Posted by: hoddy | 2005.11.12 at 01:02 PM

hoddyさん、コメントありがとうございました。

>質的な問題に直接的に効果があるわけではないけども、世に問題提起をする行動もあっても良いのかな?と思っています。

なるほど、確かにそういう行動にも意味はありますよね。ただ、今回の場合は逆効果だったような気がします。

また、「文化」として守るべきものと、変えるべきものとの見極めも難しいですね。

>とても良い記事ですね。

ありがとうございます。この件についてはまだまだ考えていきたいと思っています。

Posted by: オカダ | 2005.11.14 at 07:57 PM

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