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2006.03.10

『あの日にドライブ』

荻原浩『あの日にドライブ』光文社 を読んだ。主人公の牧村伸郎は元エリート銀行員だったが、上司へのたった一言で出世の道を閉ざされ、自ら退社した。いまは腰掛のつもりでタクシーの運転手をやっている。ある日、たまたま客を降ろしたのが学生時代に住んでいたアパートの近くだった。そして、あの時違う選択をしていたら、と考える。そこで……。

現実に不満を抱くとき、人は誰もそのように考えるものだろう。オカダも、ふとした折りに、過去に戻れるとしたらどの頃に戻りたいか、と自問することがある。暗かった高校時代か、なんとなく流されてしまった学生時代か、あるいは遊ぶことばかり考えていた仕事を始めたばかりの頃か。

今日の明け方、学生時代につき合っていた彼女の夢をみた。この小説を読んだせいかもしれないが。同窓会に出席して、その帰り、友だちと二人で会場を出ようとしている彼女に声をかけて、歩きながら話をするという内容だった。卒業以来、一度も会ってないのだけど、変わっただろうなあ。会ってみたいなあ。主人公が空想したように、オカダもあのまま彼女と結婚していたら、人生も違うものになっていただろう。

この小説は、銀行業界のこと、規制緩和の影響をもろに浴びているタクシー業界のことを詳しく描いていて、その点において、「今」という時代を鋭く抉るのに成功していると思う。結末はやや尻すぼみのように感じた。でも、様々なことに思いを馳せることができたという点では読んでよかったと思う。

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