森博嗣 『少し変わった子あります』 文藝春秋 という小説を読んだ。少し前に雑誌で紹介されていたのを読んで、気になっていたのだけど、週末図書館へ行ったら新刊コーナーにあったので、借りてきて早速読んだ。
語り手である主人公は大学の先生。後輩が行方不明になったという話を聞いて、その後輩が通っていたという、いっぷう変わった料理店の話を思い出し、そこへ行ってみることに。その店は、予約のたびに場所が変わり、毎回違う若い女性が一緒に食事してくれるという。
物語は8章から構成されていて、章のタイトルは「少し変わった子あります」から「少し変わった子あります」と続き、「少し変わった子終わりました」が終章となる。そう、主人公は、その料理店で8人の「少し変わった子」たちと出会うのだ。 その女性たちは、名前はもちろん、年齢等プライベートなことは一切話さないし、触れることもできない。
「少し変わった子」たちと食事しながら、主人公は様々なことに思いを巡らせる。ものを食べるということ、話すということ、孤独ということ。主人公はそれなりの年齢のようで、自分の人生を振り返る様に、しみじみと共感してしまった。
なんとも不思議な、奇妙な味わいの小説だった。ただし、いわゆるミステリーではない。「少し変わった子います」でなく「あります」というのがミソだろう。何しろ、この女性たちはメニューの一部なのだから。
こんな店、実際にはありえないだろうけど、あったらいいなあと思わされる、その絶妙なバランスにとても惹かれた。いうこういう店があったら、オカダも行ってみたい。同じ女性とは二度と会えないというのが何とも刹那的で、却ってそれがいいかもしれない。
この主人公は、同じ大学の先生でありながら内田樹先生とは対極にあるタイプのようで、内田先生はわざわざこんな店に行きたいとは思わないだろうなあ。必ず一人で行かなきゃならない店だし。
イラストレーターのあずみ虫さんが描いた「少し変わった子」のモノクロの挿画が、各章の扉にあり、最初の子の絵が表紙にカラーで描いてあるのだけど、どの子も趣があって、物語にとても深い雰囲気をもたらしていると感じた。
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