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2007.06.05

映画『殯の森』

BSハイビジョンで放映された映画[ 『殯(もがり)の森』を見た。公開前の映画が放映されるなんてとても珍しいだろう。マイナーな映画なので、上映される映画館が少ないようだ。そのため、製作サイドは思い切って放映することに同意したのだろうか。

もっとも、BSハイビジョンを受信できる世帯もそんなに多くはないのだろうか。うちでは去年、散々迷った挙げ句BSアンテナとデジタル放送対応のハードディスクレコーダーを設置したのだけど、設置しておいてよかった。

ストーリーの紹介は公式サイトに譲るとして、まず第一に感じたのは、邦画にしては珍しく、映像が綺麗だったこと。舞台は奈良県東部の山間地ということで、田や茶畑、森などの自然が、非常に美しく撮られていた。特に、真夏の青々と茂った田んぼを、風がさーっと渡っていく光景は、見ていてとても心地よいものだった。

グループホームで暮らす認知症の老人が主役で、その老人のしげき役を芝居は初めてといううだしげきさんが演じていて、なかなかいい雰囲気を出していた。

愛する人を失いながら、それでもなお続いていく人生。気持ちが救われるとしたら、死者が常に自分の傍にいるという感覚を持つことだろうか。人が死ぬということ、生きるということ、歳をとるということをいろいろ考えさせられた。

欲を言えば、後半の森の場面がわかりにくかった。もう少しセリフやシーンの積み重ねで見る方の気持ちを、クライマックスに向けて盛り上げてもらいたかったなあ。そうじゃないところがこの映画の魅力なのかもしれないけど。

主演の介護福祉士の真千子役の尾野真千子さんは、無名の人かと思ってたらそうじゃなくて、『芋たこなんきん』にも主人公の叔母さん役で出ていたそうで、そのことを公式サイトを見て初めて気づいた。子どもを事故で亡くし、それがもとで夫と別れることになった過去を背負う暗い女性を好演していたと思う。白いシャツにシーンズ、ズックのバッグを抱えた姿がすごくサマになっていた。

主任の和歌子役の渡辺真起子さんは、とてもいい味を出していた。きっとこれから活躍するだろう。真千子に対して言った「こうしゃんなあかんってこと、ないから」という言葉は、強く印象に残った。
ブログはこちら。http://blog.watanabe-makiko.com/

音響については、BGMも効果音も控えめで、とても淡々とした感じだった。全体のバランスが悪いせいか、ところどころセリフの音量が小さすぎて聞こえづらいところがあったのが残念だった。

この映画に登場する森を見て、大江健三郎の小説によく出てくる、死者の魂が戻ってくるという森のことに思いをはせた。そしてビートルズの『ノルウェイの森』を聴きたくなった。

こちらでの上映予定もあるようで、もしきたら、映画館でも見てみたい。そんな気にさせる映画だった。

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Comments

BSハイビジョンでもうやったんですね。ボクも見たいなと思っていたところでした。
面白そうですね。
たしか映画館では6/23から公開でしたので、忘れないように見に行きたいと思っています。

Posted by: hoddy | 2007.06.07 at 09:30 PM

ハイビジョンを観て
行きたくてロケ地の田原地区へと。
美しい風景がそこにありました。
森へは少々行けなかったです(汗

TBいたします。

Posted by: 松風 | 2007.06.07 at 11:24 PM

hoddyさん、こんばんは。
見て損のない(たぶん)映画だと思いますので、
是非ご覧になってください。
そして、感想を聞かせてもらえたらうれしいです。

Posted by: オカダ | 2007.06.08 at 05:30 PM

松風さん、はじめまして。コメントありがとうございました。

ブログ拝見しました。田原地区へ行かれたんですね。映画のとおり、美しい場所ですね。機会があったら行ってみたいです。
確かに、森へ入るのはちょっと躊躇しますね。

Posted by: オカダ | 2007.06.08 at 05:33 PM

やっとこれも記事にしましたよ♪
わたしはオカダさんほど台詞に重きを置いてないということがよくわかりました。
どっぷりと森に浸かりたくなっています。

おかしなもので、人間は大自然の中にいないと自分のいのちを実感できない生き物のようです。
何かに追われて生きてるような、そういう暮らしよりも、ゆったりとした時間の中で生活したいんですけどねえ。

Posted by: ヤヤー | 2007.06.09 at 11:53 PM

ヤヤーさん、こんばんは。

>やっとこれも記事にしましたよ♪
読みました。やっぱり感じ方もかなり違いますね。オカダは、どっちかというと台詞やストーリー重視の方だと気づきました。

>おかしなもので、人間は大自然の中にいないと自分のいのちを実感できない生き物のようです。
そうですね。養老先生が言うように脳化、都市化が進んでいるということかもしれません。

>何かに追われて生きてるような、そういう暮らしよりも、ゆったりとした時間の中で生活したいんですけどねえ。
ほんとですねえ。

Posted by: オカダ | 2007.06.11 at 06:14 PM

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