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2007.10.04

『草枕』

雑誌で紹介されていた、猪瀬直樹 『作家の誕生』 朝日新書 を読んだ。
20世紀初めの近代文学の起こりから戦後までの移り変わりを、田山花袋、川端康成、菊池寛、芥川龍之介、太宰治、三島由紀夫らその時代を背負って立っていた作家たちを紹介しながら描いていて、なかなか興味深く読んだ。

その「あとがき」に、「僕は若い人に古典を読みなさい、と勧める」とあった。古典とは、自分が生まれる前に出版された作品のすべてがあてはまる、ということだ。古典を読むことによって、今生きているという実感を相対化することができる。それによって、他者とのコミュニケーションが成り立つようになるはずだ、と。

そこで早速、夏目漱石 『草枕』 新潮文庫 を読んだ。これは、何かの理由で少し前に買って積んでいたもの。オカダは高校時代に教科書の「こころ」を読んで以来、漱石のほとんどの長編は読んだけど、これは読んだことがなかった。

amazonの紹介によれば、

智に働けば角がたつ、情に棹させば流される―春の山路を登りつめた青年画家は、やがてとある温泉場で才気あふれる女、那美と出会う。俗塵を離れた山奥の桃源郷を舞台に、絢爛豊富な語彙と多彩な文章を駆使して絵画的感覚美の世界を描き、自然主義や西欧文学の現実主義への批判を込めて、その対極に位置する東洋趣味を高唱。『吾輩は猫である』『坊っちゃん』とならぶ初期の代表作。

ということだ。

冒頭の

山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角がたつ、情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。

は有名だ。

主人公は30歳の画家で、春、熊本県の小天温泉がモデルという、那古井という山奥の温泉へ旅をする。そこでの出来事が描かれているのだけど、ドラマチックな物語が展開するわけではなく、淡々と話が進んでいく。むしろ紀行文に近い趣がある小説。

何しろ注記が多い。漢文、英文学、俳句、和歌、それにその時代の着物や日常の細々したモノなど、わからない言葉だらけだから、当然。この本が出版された当時からして、相当の教養がないと読みこなせなかっただろうなあ。

それでも、内容自体は面白く読めた。主人公は30歳だけど、青年ではなくて立派なおじさんという風だ。画家と言っても職業画家じゃなくて、ただ趣味で描いてるという感じ。かなり老成した態度で、世間や人間を離れたところから見てあれこれ批評しているところに独特の味わいがあった。

解説は江藤淳と柄谷行人と、これがまた豪華な顔ぶれ。

たまにはこういう本を読むのも、立派なおじさんを目指すのにはよさそうだなあ。これを読んで、どこかの鄙びた温泉に長逗留したくなった(笑)。

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Comments

『作家の誕生』はホントもっと若いときに読みたかった文壇史ですねぇ。
オカダさんは『草枕』を読まれたんですね。
わたしは佐藤春夫を読んでみたくなりました。
作家の人となりを知ると、俄然興味が湧くのです。
やっぱり、その生活や生き方が書くものに顕われるからでしょうか。

この記事を読んで、わたしも温泉に行きたくなっています(笑)。<読みたくなれよ!

Posted by: ヤヤー | 2007.10.06 at 12:18 AM

ヤヤーさん、こんばんは。
>『作家の誕生』はホントもっと若いときに読みたかった文壇史ですねぇ。
ホントにそうですね。誰もが偉い作家であるだけじゃなく、当然ながら生身の人間であるということがわかってたら、もっと身近に感じられたでしょうね。

ほお、佐藤春夫さんですか。オカダは、今さら?ですが芥川や太宰を読んでみたくなりました。少ししか読んだことがないので。

『草枕』は、誰にもお勧めできるタイプの本ではないですしねえ(^_^;)。

Posted by: オカダ | 2007.10.09 at 05:58 PM

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