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2008.10.08

『切羽へ』

だいぶ秋らしくなってきて、ご近所の家の庭でキンモクセイの花が咲き始め、甘い香りが漂い始めた。最近のオカダは何となくメランコリックな気分。原因はいろいろあるのだけど、そういう気分もじっくり味わって、またあれこれ悩むのも人生かな。

Begonia1008

花盛りのベゴニア。同じ鉢に寄せ植えしたナデシコはもう枯れていまったけど、こちらはまだまだ元気だ。本当に丈夫だなあ。オカダもあやかって細く長くやっていきたい。

俳優の緒方拳さんが亡くなられた。夏にNHKのドラマ『帽子』を見たとき、今まであったアクの強さが薄れて、ずいぶん枯れたなあという印象を受けたのだけど、やはり体調がよくなかったのだなあ。明日から始まるフジテレビのドラマ『風のガーデン』が遺作となってしまったそうなので、是非とも見てみよう。

さて、映画ばっかり見るのもだんだん飽きてきて、久しぶりに読んだ小説が、井上荒野(あれの) 『切羽へ』 新潮社。

裏表紙の帯に

静かな島で、夫と穏やかで幸福な日々を送るセイの前に、ある日、一人の男が現れる。夫を深く愛していながら、どうしようもなく惹かれてゆくセイ。やがて二人は、これ以上は進めない場所へと向かってゆく。

「切羽」とはそれ以上先へは進めない場所のこと。宿命の出会いに揺れる女と男を、緻密な筆に描ききった美しい切なさに満ちた恋愛小説。

と書いてあるのだけど、まさにそのとおりの小説だった。まあ、「宿命の出会い」おいうのはちょっと大げさだし、「恋愛小説」と一括りにしてしまうのももったいない気がする。

主人公のセイは30代の小学校の養護教諭。夫は画家。小説は「明け方、夫に抱かれた。」という文章で始まる。

 夫は、夜更けて布団に入ってくるとき、私を眠らせたまま抱こうとすることがよくあった。
 そんなとき私は、自分が卵の黄身になったような気持ちがした。

映画と小説の大きな違いはというと、小説の方が登場人物の内面を表現するのに向いているということが言えると思う。「そんなとき私は、自分が卵の黄身になったような気持ちがした」というのを画面上でナレーションとして語ることはできるけど、それよりも文字で表現して読者に想像してもらう方がより伝わりやすいだろう。全編を通して綴られる主人公の揺れる想い。これを映像で表現することはかなり難しいだろう。

女性らしい細やかな感情表現。そして情景描写。淡々と進んでゆく物語。とても美しく、長く余韻の残る小説だった。

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Comments

オカダさんこんにちは~
オカダさんは、ガーデナーなのですね。ベゴニアもペチュニアもきれいですね~
私が植えたベゴニアは、虫に食べられ猫に踏み荒らされ散々な目にあってしまいました。なので、最近は部屋の中でミニグリーンをいくつか育てています。

井上荒野さんご自身が『切羽へ』を語っているのを偶然テレビで観ました。‘切羽’という言葉の意味と語感にこだわったとお話でした。是非読んでみたいな、と思っています。。

Posted by: Poke | 2008.10.28 at 06:56 PM

Pokeさん、こんばんは。
最近手抜きばかりのガーディナーですが、それでも花はたくましく綺麗に咲いてくれるのがありがたいです。
どうしても屋外だと虫や病気にやられてしまいますよね。その点ミニグリーンだと比較的育てやすくていいですね。

井上荒野さんをTVでご覧になったんですか。僕も見たかったです。何という番組でした?。
この小説、かなりおススメです。読んだら是非感想をお聞かせ下さい。

Posted by: オカダ | 2008.10.29 at 05:57 PM

NHK BS2の「週間ブックレビュー」という番組です。
(毎週土曜日 午前8:30~9:24 、 毎週日曜日 午後11:45~翌0:39)
9月6日の放送分でした。NHKのHPで、番組の内容や井上さんご出演の様子が少しですが記されています。
今手元に本がたまっているので時間がかかると思いますが、是非読んでみたいと思っています。。

Posted by: Poke | 2008.10.30 at 12:26 PM

Pokeさん、ありがとうございました。
早速HPを見てみました。確かに少しでした。この番組、以前は見てたんですが、最近は見てませんでした。

>今手元に本がたまっているので
いずこも同じですね(^_^.)。

Posted by: オカダ | 2008.10.30 at 06:48 PM

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