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2010.02.26

『水死』

バンクーバー冬季オリンピックの女子フィギュアで浅田真央選手は銀メダル。金メダルではなかったけど、とても立派な成績だと思う。弱冠19歳にしてあれだけのプレッシャーをはねのけるというのはもの凄い精神力だなあ。オカダにはとても無理だ。

そんなおり、大江健三郎『水死』講談社をやっと読み終わった。大江は愛媛県出身ということもあって、昔から読み続けている。しかし、もはや同時代の作家というより過去の、近代の作家とでも呼んだ方がいいようなポジションにいるのだろう。

言ってみれば、法事か何かの機会に久しぶりに会った親戚の叔父さんが、近況をだらだらと話しているのを傍で黙って聞いている、そんな感じの読書体験だった。また長話が始まった、とちょっとうんざりしながらも、当の叔父さんや奥さん、その子どもたちの近況を、ある種懐かしい思いを抱きながら聞いている、そんな感じで読み進めた。

物語の舞台は、例によって東京の自宅及び生まれ故郷の四国の山奥の村。今回の話は、主人公である老作家の古義人が、少年のときに水死した父親についての「水死小説」を書こうとする様子が展開するのだけど、途中までだらだら進んでいたストーリーが、終盤になって急展開し、思いがけない結末を迎えることになった。予想外のスリリングな内容で、読後強く残るものがあった。端的に言ってしまえば「性と暴力」ということになる。

小説中に、最近は文庫本も売れなくてあまり印税が入ってこないと主人公がぼやく場面があったが、現実もそうなのかもしれない。

また、最近は、この作品のような、自分がモデルになっている小説ばかり書いているという批判に対して、主人公にそういう小説しか書けない、と語らせているが、それも大江自身のことと重なっているのかもしれない。

以前の小説に比べると読み易い文章になっていることは確かだけど、以前からの大江の読者以外にはお薦めできないというのが正直なところ。それでも自分にとっては面白かったし、これからも新作が出る度に読むことだろう。

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2010.02.19

女優片岡礼子さんのラジオ公開生放送

愛媛県松前町出身の女優・片岡礼子さんが、NHKラジオの全国向けの公開生放送に出演されます。片岡さんは、最近ではNHKの『外事警察』に出演されていました。近いところでは映画『ぐるりのこと』にも出演されています。

番組 NHKラジオ第1・FM「ここはふるさと旅するラジオ」
日時 2月22日(月)時間は午後0時30分から50分まで
場所 愛媛県松前町のエミフルMASAKI フローラルコート前広場

片岡さんは愛媛県出身ということでオカダも応援しています。これが24日だったら見に行けたんですが。orz

片岡さんの代表作『ハッシュ!』。

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2010.02.18

『不幸な国の幸福論』

今年もいよいよ確定申告の季節がやってきた。毎年何とか2月中に終わらせたいと思うのだけど、今年も結局期限ギリギリまでかかってしまうのだろうなあ。

そんなおり、加賀乙彦『不幸な国の幸福論』集英社新書を読んだ。「不幸な国」とはもちろん日本のこと。精神科医で作家である著者は、1929年生まれ。オカダが著者の『現代若者気質』という本を古本屋で買って読んだのは確か高校生の頃で、あれから数十年経ったけど、今も現役でおられるのだと思うと感慨深い。

この本の第1章では、冒頭で秋葉原通り魔事件の犯人を例に挙げ、幸福を阻む考え方・生き方について考察していて、一つは「『考えない』習性が生み出す不幸」、もう一つは「他者を意識しすぎる不幸」について述べている。

第2章では、「『不幸増幅装置』ニッポンをつくったもの」と題して、日本という国について考察している。

第3章では、「幸福は『しなやか』な生に宿る」と題して、幸福を生み・担う生き方について考察している。

第4章は「幸せに生きるための『老い』と『死』」と題して、人生85年時代の「豊かな老い」の過ごし方について考察している。

何と言っても本書の胆は第3章。著者は、幸福を定義してはいけない、と言う。何故なら、幸福とはこういうものだと考えた途端、人間はその定義と自分の状態とを引き比べ何かしらのマイナスを見つけてしまう傾向があるから。そして、つまるところ幸不幸は考え方次第だと言う。

そのありふれた結論について、著者独自の考察が加えられていて、非常に腑に落ちるもので、これから生きていく上で大いに参考になる内容だった。

ちょっと生きるのに疲れたら、手にとってほしい本。

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2010.02.05

『男おひとりさま道』

1月31日に放送された『NHKスペシャル「無縁社会」』を見た。NHKの調査によると、誰にも知られず、引き取り手もないまま亡くなる「無縁死」した人はで一昨年3万2千人いたという。

番組では、都会で「孤独死」した人を取材していたが、中には田舎に兄弟がいるにもかかわらず、生前全く交流がなく、経済等の理由でお骨を引き取ってもらえないケースもあった。

日本社会は、戦後「地縁」、「血縁」といった「縁」をどんどん断ち切る方向に進んできた。残された細い絆も、リストラや離婚といったことによって容易に切れてしまう、そういう孤立しやすい社会であることはことは間違いないだろう。それは、結局「みんな」が望んだからそうなったのだろう。

ちょうどその日、図書館で上野千鶴子 『男おひとりさま道』 法研 を借りてきたところで、早速読んだ。この本は、2007年にベストセラーになった『おひとりさまの老後』の男性向けのもの。でも、前著を補足する部分もあって、女性にも役立つように書いたそうだ。

人との繋がりがどんどん薄れていく中で、男はひたすら「社縁」にすがってきたわけだけど、定年退職によってその社縁も断ち切れてしまったら本当に孤独になってしまう。定年後に生き生き暮らすには、「社縁」以外の人間関係が重要だそうだ。

著者によると、「カネ持ちより人持ち」ということで、老後のおひとりさまを支えてくれるのは、「ユル友(ユルく、淡くつながっている)ネットワーク」だという。それは、常々内田樹先生が提唱されている新たなコミュニティ構想にも共通するものだろう。それによって、死後何日も発見されなかったということも防げるだろう。

オカダも「ユル友ネットワーク」を築くように努力しつつ、やっぱりひとりで生きていける「おひとり力」も身につけないとなあ。

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