2014.05.09

『女のいない男たち』

Suzuran0509


スズランの花が咲き、ゴールデンウィークも終わった。気がつけば2ヶ月もこのブログを更新していなかった。いろいろと慌ただしかったしなあ。

Umi0509


そのゴールデンウィークは、特に出かけることもなく、家でのんびりした。一日だけ、天気のいい日に近くの海へ行き、のんびり本を読んだ。

読んだのは、村上春樹の新作短編集『女のいない男たち』 文藝春秋。6つの短編が収められていて、うち4つは『文藝春秋』に掲載されたもの。「シェエラザード」が雑誌『MONKEY』に掲載されたもので、本のタイトルにもなった「女のいない男たち」は表題作として書き下ろし。

最初に「まえがき」と未読の2編を読み、後から『文藝春秋』に掲載されたものを読んだ。どれも村上春樹の短編らしい、メタファーとウィットに富んだ、味わいのあるものだった。

大きく分けると、比較的リアルなんだけどストーリーがやや特殊なもの「ドライブ・マイ・カー」などの系統のものと、幻想的、非現実的なもの「木野」などの系統のものがあって、そのどちらも読み応えがあり、もっと続きが読みたいと思わずにはいられなかった。

もちろん、最初から短編として書かれたものなのだから、「もうおしまい?!」と思うのは当然のことだ。謎が解明されないのも、意図してのことだろうし。

オカダはあまり短編小説が好きではないのだけど、村上春樹の作品だけは読んできていて、読む度ごとに短編小説もなかなか面白いものだなと思う。といって、他の作家のものを読もうとは思わないのだけど。

このぶんでいくと、来年あたりには次の長編小説が読めるかもしれない。今から楽しみにしておこう。

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2014.03.07

『独立器官』

Primura0307

もう3月だというのに、今日は寒い一日だった。そんな中、プリムラの花が満開になった。春が確実に近づいているということだなあ。その分、スギ花粉もぶんぶん飛んでいるということだけど(^_^;。

さて、遅ればせながら『文藝春秋』三月号に掲載された村上春樹の書き下ろし短編小説、『独立器官』の感想など。

二月号の『木野』については感想を書かずじまいだったけど、かなり幻想的な内容だったのに対して、今度の『独立器官』は、リアルな小説となっていて、語り手として作家である「僕」が登場する。

そして語られるのは友人の渡会という美容整形外科医。52歳、独身で、麻布の瀟洒なマンションに一人暮らしをしている。そして、これまで交際する女性に不自由したことがなく、結婚して家庭を持つということをまったく望まない人物。

そんな渡会医師が、ある女性と出会い、「誰かのことを好きになりすぎるまいと決心して、そのための努力を」するようになる。その女性には、夫も5歳の女の子もいる。

そこから物語は思いもよらぬ方向へ転がっていく。タイトルの「独立器官」とはいったい何なのか、はネタバレになるのでここでは書けないけど、女性からは反感を買いそうな感じではある。

読み終わって、背筋に寒気が走るような、非常に怖ろしい思いを抱いた。もしかしたら、現実にもこういう話がそこら辺に転がっているのかもしれない。そう思わされるような、リアル感たっぷりの小説だった。

『文藝春秋』四月号はもうすぐ発売だけど、はたして次の新作も載っているのか、非常に気になるところだ。

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2014.01.10

新年の御挨拶&『イエスタディ』

みなさま、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

新しい一年がスタートした。去年と同じく、特にこれという抱負も思い浮かばない。都会の方では景気がよくなってるようだけど、田舎ではまだ全然実感がない。

今抱えている問題も、傍から見たら全然大したことではないだろうし、今年もどうにか平穏に暮らしていければいいなあ。

元日に最寄りの神社へ初詣に行って、おみくじを引いたら末吉だった。やはり今年は雌伏の年かも。

さて、去年書かずに終わった、『文藝春秋』1月号に掲載された村上春樹の書き下ろし短編小説、『イエスタディ』の感想など。

今回の主人公は、前回と違って大学生。バイト先で知り合った風変わりな友人と、そのガールフレンドとの関わりの話で、今までの村上作品(特に短編)によくあるタッチでありながら、この作品ならではの展開があって、なかなか味わい深いものだった。

人間というのは、複雑で不可思議なものだなとつくづく思う。そういう現実を、小説という形式で再構築して提示してくれる手腕は、さすがだ。

と書いてたら、今日もう『文藝春秋』2月号が発売された。早く次の作品を読みたい。何本か掲載されたら、また短編集が出るんだろうな。今から楽しみだ。

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2013.11.22

『ドライブ・マイ・カー』

Minibara1122

季節はどんどん冬へと傾斜しているような気がする。昨日はボージョレ・ヌーボの解禁日。

しばらくブログの更新ができなかった。自分で自分を忙しくしている感もあり、早く落ち着かなくては、と思ってはいるけど、年内は難しそうだ。

そんなおり、どうせ手入れもできないのだけど、ついついミニバラを買ってしまい、僕の庭にピンクの薔薇が咲いた。

そして、『文藝春秋』12月号に掲載された村上春樹の書き下ろし小説、『ドライブ・マイ・カー』を読んだ。

上下二段、25ページほどの短編小説。主人公は俳優。妻を亡くしている。そして、マイカーのドライバーとして若い女性を雇った。妻にはある秘密があった……。

いかにも村上春樹らしい雰囲気の小説。短いストーリーの中に、人生、男と女、夫婦、友情といったものに対する村上春樹の人生哲学が凝縮されていて、読んで濃密な味わいを堪能することができた。

しかしながら、若い女性ドライバーがストーリーの中でさほど活躍するでもなく、無性にこの続きの短編、あるいは長編を読みたいと思った。

『極東ブログ』に解説記事があります。

ちなみに、『ドライヴ・マイ・カー』はビートルズの曲で、アルバム『ラバー・ソウル』に収録されている。この小説、ポール・マッカートニーの来日に合わせたのだろうか。

たぶん、内田樹先生と同様に村上春樹もポールのライヴを見に行ったんだろうなあ。オカダもこの週末、BSで放映されたポールのライヴの録画でも見ることにしよう。

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2013.04.19

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

お待ちかねの村上春樹の新作、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』。予約していたのに、入手できたのは14日。これだから田舎は……。それから3日かけて読んだ。

読み始めて感じたのは、これは短編のテイストだなということ。短編集『螢・納屋を焼く・その他の短編』に収められている短編小説群にも似た味わいを感じた。376ページというボリュームからすると、とても短編とは言えないのだけど、村上春樹の作品の中では長編というより短編よりやや長い中編小説という位置付けになるだろう。

本作は、実験的な作品『アフターダーク』とは異なり、オーソドックスと言っていい作品となっている。主人公の多崎(たざき)つくるは、デビュー作『風の歌を聴け』から幾度となく登場してくる「僕」そのものだということ。友人がほとんどいない、仕事をコツコツとこなし、プールに通って水泳をし、自分で料理を作る。それほど自分の能力、容姿にに自信はないけど、女性にモテる。それだけに主人公に感情移入しやすく、物語にも入り込み易かった。

物語は、「大学二年生の七月から、翌年の一月にかけて、多崎つくるはほとんど死ぬことだけを考えて生きていた。」という文章で始まる。それは、高校時代からの親しい友人5人組から唐突に理由なく排除されるという出来事からくるもので、一種のミステリー仕立てになっており、ぐいぐいと読まされた。

この作品の一番大事なテーマは「回復」だと感じた、一度失われてしまったものは、二度と取り戻すことができない。しかし、代わりに別のものを手に入れることで、その穴を埋めることは十分可能だと。余韻を残すエンディングであり、生きてゆくことへの希望を呼び起こしてくれる作品だった。

村上春樹の作品史の中においては、特に言及されることのない作品かもしれないけど、十分読み応えがあった。

表紙の絵は、今は亡きアメリカの画家モーリス・ルイスの「Pillar of Fire」(火柱)という作品。

作中に登場するラザール・ベルマンが演奏するリストの『巡礼の年』のCDが、5月に緊急発売されるという。もう一度、『巡礼の年』のCDを聴きながら、今度はじっくり読んでみたい。

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2012.11.02

『海辺のカフカ』

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近所のホームセンターでビオラが売られていたので早速買ってきて植えた。春がくる前に、いよいよ冬がやってくるのだなあという気持ちになる。

そんなおり、ちょっと体調を崩して2日ほど寝込んだ。今回はさほど頭痛がひどくなかったので、村上春樹の『海辺のカフカ』 上下巻 新潮社 を久しぶりに読んだ。

この小説は、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』と同様に2つの物語が平行して進行していく構造になっていて、ひとつはカフカ少年の話、もうひとつはナカタ老人とホシノ青年の話になっている。

で、村上春樹の小説によくあるように、冥界やパラレルワールドが出てくるし、歩哨(センチネル)が出てくる話でもあり、ハルキワールド全開なので、春樹ファン以外にはお勧めしにくい内容だと思う。

また、『ねじまき鳥クロニクル』ほどではないにしろ残酷な場面も出てきて、その部分を読んでると病状が悪化しそうだった。

でも、読み終わってみると、全体としては15歳のカフカ少年の成長、更生の話と思われ、読む側に明日への元気を与えてくれるような小説だった。

何よりこの小説の魅力は、ナカタさんという、猫と会話ができたりするユニークかつユーモラスなキャラクターと、ホシノくんという、今までの村上春樹の小説には出てこなかったようなタイプの人物が醸し出す味わいだと思う。

で、『ねじまき鳥クロニクル』ほどではないにしろ、やっぱりいろいろな謎が残されたままだったりするのも、余韻が残る感じでいい。

そういえば、この『海辺のカフカ』は柳楽優弥主演で舞台化されたそうだ。どんな感じだったのだろう。BSあたりで放送してくれないかなあ。

で、なぜこの時期に『海辺のカフカ』なのか、については、近いうちにエントリーを書く予定です。

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2012.10.12

『ダ・ヴィンチ 2012年 10月号 いまこそ、村上春樹』

残念ながら今年も村上春樹のノーベル文学賞受賞はならなかった。オカダ自身はさほど気落ちしていないのだけど、内田樹先生の受賞記念原稿が読めないのが残念。来年こそ受賞できるといいのだけど。

先日たまたま本屋に行って『ダ・ヴィンチ 2012年 10月号』を見たら、村上春樹特集だったので速攻で買ってきた。

特集の最初は『村上春樹メールインタビュー』。自分の作品についての質問にはいささかぶっきらぼうな感じで答えているけど、音楽についての質問などは率直に答えているのが印象的だった。

特集の後半には、内田樹先生による、これから村上春樹を読み始める若い読者のためのキーワードガイドが載っていた。

その1は「空虚ーあるいはドーナツの穴」。その2は「コスモロジカルに邪悪なもの」。その3はおなじみの「センチネルたちの仕事」。そしてその4は「ここではない世界」。

その他、なかなか内容の充実した特集だった。そういえば、『ダ・ヴィンチ』を買うのは久しぶり。この雑誌が読者と想定している対象から大きくはずれてしまったような感じだし。

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2012.09.28

『サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3』

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暑さ寒さも彼岸までと言いながらも、日中はまだまだ暑い日が続いている。アメリカアサガオの花もまだ咲いている。そろそろかたづけようかとも思うのだけど、夜にぎやかな虫たちのごはんになっているようなので、躊躇している。

今日の内田樹先生のつぶやきで、村上春樹が領土問題についてのエッセイを朝日新聞に寄稿していたことを知り、早速読んでみた。春樹さんは、マラソンやトライアスロンに挑む肉体だけではなくて、「やれやれ」と言いながらも、決してへこたれない精神的タフさを持っているんだろうと思う。そういうタフさを発揮しなければやっていけない数多くの場面をくぐってきたからこそ、あのような文章が書けるんだろうなあ。

思うに、人間の身体が、食べ物を満足に食べられない状態が続くことにいまだに適応しているように、精神の方も、集団内では団結し、他の集団と争っていくことに適応しているのではないだろうか。人とケンカするのは簡単だけど、仲良くやっていくことはなかなか難しい。他国の文化に対して、そして理解の難しい他人に対しても、敬意を忘れないようにしていきたい。

さて、少し前に読んだ村上春樹 『サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3』 マガジンハウス について、忘れないうちに書いておこう。ご存じのとおり、『anan』に連載されたエッセイを収めたもの。

タイトルにもなった「サラダ好きのライオン」という比喩からして春樹さんらしいユーモアに満ちている。そして、人生についてのいくつかの鋭い達観が散りばめられていて、読んでいろいろ教えられた。隣国の人たちも、この本を読んでほっこりした気分になってくれたらいいのだけど。

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2012.08.24

『Sydney!(シドニー)』

お盆も終わり、処暑も過ぎたというのにまだまだ暑い日が続いている。お盆は、親戚がやってきて、にぎやかな毎日だった。そんな中、アメリカアサガオが今年も涼しげな花を咲かせている。

オカダはあまりオリンピックに興味がないのだけど、それでも男子サッカー、女子サッカー、女子バドミントン、女子卓球、女子バレーボールの試合は各1試合ずつくらい見た。
中でも、女子卓球チームのメダル確定のニュースは、何度見ても胸が熱くなった。それはやはり、あの卓球少女が20年という歳月をかけてメダルを獲得したという「物語」が脳裡をよぎったからだろう。

そのオリンピックも終わり、ふと思い出して読んでみたのが村上春樹の『Sydney!(シドニー)』文藝春秋。この本は、シドニーオリンピックの翌年の2001年1月に発行され、時を置かずに買い求めていたのだけど、オリンピックが終わってかなり月日が経っていたこともあり、すぐ読む気になれず、長らく!書棚の奥に眠っていたのだ。

この本には、村上春樹が雑誌『ナンバー』から依頼を受けて、シドニーオリンピックを観戦した様子が日記形式で書いてある。その滞在は、開会式前から閉会式後まで実に23日間にも及んでいる。

そして村上春樹のスタンスは、「そんなもの、ただのメダルじゃないか」という、帯にも引用されている一文に象徴されているように、ちょっと冷めたシニカルな態度で貫かれている。曰く、「オリンピックは退屈なものです。そう、ブラームスのシンフォニーのように」。

それでも、オーストラリアのアボリジニーの選手、キャシー・フリーマンが金メダルをとった瞬間のことは、絶対にその会場にいなければ体験できなかっただろうと書いている。

毎朝ジョギングしたり、片道1000キロをドライブして男子サッカーの試合を見に行ったり、夜はパブでビールを飲んだりと、やはりタフでハードボイルドなハルキさんであった。

そして中にはオーストラリアという国の歴史や国情、コアラやワラビー、ワニやサメ、毒蛇といった生態系のことなども書かれていて、結構ためになった。

割と気軽に読めるエッセイ風の文章ではあったけど、春樹さんらしい洞察も随所に散りばめられていて、とても読み応えがあった。オーストラリアの宗主国イギリスで開かれたロンドンオリンピック終了の直後に読んだのは、絶好のタイミングだったと思う(^_^;。

2004年のアテネオリンピック前に、この本の文庫本が「コアラ純情編」と「ワラビー熱血編」の2分冊という形で出ていた。

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2012.01.27

『小澤征爾さんと、音楽について話をする』

Sakurasou0127

寒い日が続いている。昨夜、12時頃の寝室の気温は6度くらいだったが、痛いくらいに寒く感じた。来週あたりが寒さのピークかな。そんな中でもサクラソウの蕾がふくらみかけていて、春の息吹を感じる。

そんなおり、小澤征爾・村上春樹 『小澤征爾さんと、音楽について話をする』 新潮社を読んだ。タイトルどおり、村上春樹が小澤さんと、何回かに分けて音楽について話した内容が収められている。

読んで強く感じたのは、春樹さんが無茶苦茶深く音楽を聴いていて、なおかつ細かいこと、例えばあのときとこのときの演奏ではここが違うとか、そういうことまでよく憶えていること。外部記憶装置としていくらパーソナルコンピュータが普及したといっても、アクセススピードにおいて脳に記憶していることに勝るものはない。

そして多くの稀少なレコードを蒐集している。音楽好きというよりはコレクターだな、やっぱり。

オカダはクラシック音楽に疎いので、ブラ-ムスの交響曲何番と言われても全然ピンと来ないのが残念ではあるけど、それでも小澤さんの指揮者人生の話など、とても興味深く読むことができた。

そして、無性にクラシックが聴きたくなり、引っ張り出して聴いたのがこれの5枚目。これからも、たまには聴いてみようかな。

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クラシックファンのみならず、春樹さんが好きだけどクラシックは聴かない人にもお薦めの1冊。

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